有病者歯科
有病者歯科
高齢の患者様は、多くの場合、何らかの基礎疾患を抱えており、安全に治療を行うためには、従来の歯科医師には内科学的知識が求められていました。しかし、現代の歯科医師には、全身麻酔手術の前後の口腔ケアや、整形外科の骨粗鬆症、産婦人科領域など、内科に限らず幅広い医学的知識が求められています。当院の院長は、口腔外科医として約10年間総合病院で勤務した経験があり、内科学的な知識だけでなく、広範な医学的知識を持っています。また、総合病院での勤務経験から、医科歯科連携を日常的に行っており、近隣の病院や総合病院との連携により、安心して安全に治療を受けていただける体制を整えています。
有病者歯科とは、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳梗塞などの全身疾患をお持ちの方を対象に行う歯科治療のことです。中高年以降の方は、生活習慣病をはじめとする内科疾患を抱えていることが多く、また超高齢化社会において、何らかの基礎疾患をお持ちの高齢者の方が急増しています。このような有病者の方々は、基礎疾患のために十分な歯科治療を受けることが難しく、お口の健康が損なわれているケースも少なくありません。有病者歯科は、こうした患者様が安心して適切な歯科診療を受けられるようにするためのもので、日本の高齢化が進む中、その重要性がますます高まっています。
当院では、身体に病気を抱える患者様の治療を開始する前に、まず疾患や身体の状態をしっかりと把握します。治療中は、各種モニターで全身状態を常にチェックし、安全に歯科治療を受けられるよう医学的管理を行っています。また、緊急時には基幹病院との連携を図るだけでなく、AED(自動体外式除細動器)、救急薬品、救急蘇生用医療器材を常備し、万が一の事態に備えた医療体制を整えています。
「持病があるから歯科治療ができない」ということはほとんどありません。何らかの病気があり、歯科治療に不安を感じている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
健康な方でも「歯の治療は痛くて怖い」というイメージを持っていることが多いのではないでしょうか。この「痛くて怖い」という感覚は、病気をお持ちの方やご高齢の方にとって、さらに強く感じられることがあります。場合によっては、歯科治療に対する不安やストレスが全身疾患を悪化させることさえあります。有病者歯科は、このような方々に対して、治療内容や使用する器材・薬剤を工夫し、心身への負担をできるだけ軽減しながら、安全に歯科治療を行うことを目指しています。
歯科治療には、患者様が想像している以上に全身に負担をかける処置が多くあります。全身状態を把握せずに治療を進めることは、思わぬ重大な事態を引き起こす可能性があり、歯科医師には、あらゆる事態を想定し、それを予防する責任があります。また、予測できない事態にも迅速かつ適切に対処する能力が求められます。
現代は超高齢化社会に突入し、ご高齢の方の多くが何らかの疾患を抱えながら歯科を受診しています。病気の影響を考慮しないままに歯科治療を行うことは不可能であり、有病者歯科の必要性は時代の要請ともいえるでしょう。
かつては、内科疾患を抱える方への麻酔を伴う歯科治療は、リスクが高いために必要最小限にとどめる傾向がありました。しかし、近年では積極的に治療を行う方向に変化しています。この背景には、医療機器や医療技術の進歩(監視モニターなどの開発)により、リスクを抑えた治療が可能になったことや、歯科疾患と全身疾患(糖尿病、嚥下性肺炎、心内膜炎など)の関連性が明らかになってきたことがあります。
また、有病者に対するQOL(生活の質)の向上といったニーズも高まってきています。お口は、食事のためだけでなく、会話や意思表示、笑うことや歌うこと、愛情を表現するといった人とのコミュニケーションにも深く関わっています。生涯にわたって豊かな人生を送るために、お口の機能を維持することは、高齢化社会における歯科医療の大きな役割といえるでしょう。
1.全身状態の評価
歯科治療を開始する前に全身状態や疾患の程度を把握し、治療計画を立てます。
必要に応じ、かかりつけの医師に問い合わせを行い、病気の種類や重症度、現在服用している薬などについて情報提供を受けます。この情報連携は、抜歯などの侵襲の高い処置がどこまで行えるかを評価する際にとても重要です。
2.治療中のモニタリング
自動血圧計、パルスオキシメーター、心電計モニターなどを使用し、全身の状態を確認しながら安全に治療が進められるように配慮します。
3.緊急時に備えた医療設備
降圧剤、昇圧剤、抗不整脈薬、ステロイド剤などの救急薬剤やAED(自動体外式除細動器)、救急蘇生用医療器材を常備し、緊急時に備えた体制を整えています。
4.全身管理に精通した歯科医師による治療
全身状態が悪い方や重症度の疾患を有する方の治療は、全身管理のトレーニングを受けている歯科医師(歯科麻酔専門医や口腔外科専門医)が担当します。
この他、アレルギー疾患、出血性素因(出血しやすい、血が止まりにくい)なども対象となります。
患者様の全身状態を確認し、それぞれに合った歯科治療を提案させていただきます。
※なお、コントロールの不良や病態が重症で、当院での治療が困難と判断した場合、高度医療機関を紹介させていただくことがあります。
どのような疾患をお持ちであっても、最も大切なことは、安心・安全に歯科治療を受けられることです。リラックスして治療を受けることも非常に重要です。そのためには、まず患者様が抱える病気の状態や症状をしっかりと把握する必要があります。
私たちは、問診票や問診を通じて、患者様の全身状態を確認しています。これには、既往歴、現病歴、服用中の薬剤、通院されている病院名、生活状況などが含まれます。その際、お薬手帳は非常に貴重な情報源となりますので、受診時には必ずご持参ください。場合によっては、持病の経過や状況が把握できない場合、かかりつけの医院に確認を取ることもあります。
また、来院後に体調や気分が悪くなった場合は、速やかにお知らせください。その時の状態に応じて、治療内容を変更したり、延期したりすることも可能です。患者様の安全を第一に考えた対応を行っていますので、安心してご相談ください。